こころの調子を整える脳内ホルモンのはなし
脳内では絶えずたくさんのホルモンが分泌されています。今回はこころを整えるために重要で代表的なホルモンを3つ紹介します。
①ドーパミン
ドーパミンは、主に楽しい気分ややる気などと関係するといわれています。ワクワクしたり、やる気になったりしているときは、ドーパミンが適度に出ていると考えられます。一方で、ドーパミンの分泌が不足すると、興味関心が低下したり、おっくうになったりしがちです。
ドーパミンは、体が気持ちが活動的になると分泌されやすくなります。立つ、歩くなどの日常動作や、スポーツ、会話、新しいことへの挑戦、勝負ごとといったことがあてはまるでしょう。また、一年の計は元旦にありといわれるように、新たな目標を立てた時にもやる気がみなぎることがあると思います。その時にも、ドーパミンが分泌されているといわれます。
②セロトニン
セロトニンは、安心ホルモンとも呼ばれています。このホルモンが適度に出ているときには、気分が安定して穏やかな気持ちになり、ストレスにも強い状態になります。しかし、このホルモンが何らかの原因で不足すると、感情が不安定になりやすく、疲れやすくなったり、眠れなくなったりという状態を引き起こします。
セロトニンは、リラックスしたり、日光にあたったり、体を温めたり、人と関わったりすることで分泌されやすくなります。人とのかかわりについては、家族や友人など身近な方とあいさつをしたり、話したり、微笑みあったり、ほめられたりするとよいと言われます。
③ノルアドレナリン
ノルアドレナリンは主に、緊張感や集中力と関係するといわれています。このホルモンが適度に出ている状態では、脳が活性化し、判断力、集中力が上がり、能率的にものごとをすすめられます。一方、不足すると集中できなくなり、力が抜けたような状態になりやすくなります。
ノルアドレナリンは、少しの緊張感を伴うような活動と関係します。勝負事をしたり、スポーツをしたり、締め切りのある活動をしたり、人前で発表したりといったことです。緊張感は、できれば避けたいという方も多いと思いますが、成長のためには欠かせない要素ともなっています。
これらのホルモンは、バランスを保ちながら私たちの体内に存在しています。たとえば、家でリラックスしているときはセロトニンがたくさん出て、ドーパミンやノルアドレナリンの分泌が低下する。スポーツをしているときにはドーパミンとノルアドレナリンがたくさん出る、など、私たちの行動や感情と深くかかわっています。
これらのホルモンのバランスが良い状態になると以下のようなことが起こります。
- 体内時計が整う
- イライラを抑え穏やかな気分になる
- やる気が出る
- 冷静な判断ができる
- 自律神経が整う
- ストレスや痛みに強くなる
- 姿勢がよくなる
- 脳や体を若々しく保つ(認知症予防にも効果的)
ストレスは、これらのホルモンのバランスに大きく影響します。過度なストレスが長期間続くと、正常なホルモン分泌ができなくなり、心身に影響が現れます。
ストレスを減らし、ホルモンバランスを正常に保つために、リフレッシュの時間を持つことが大切です。
たとえば、入浴、歌を歌う、深呼吸、軽運動、スポーツ、食事、日光浴など、ゆったりと楽しめてリラックスできる時間を日常に取り入れてみましょう。
また、食事の面では、乳製品、大豆食品、魚、果物などを食べることによって、ホルモンバランスを整えるのを助けると言われます。
脳内のホルモンは、基本的には日々減少し作りためておくことができません。そのため、毎日ホルモンの分泌を整えるための行動をする必要があります。疲れを感じたら深呼吸をするくせをつける、など、取り組みやすいものから始めてみましょう。
(心理室:伊藤 季代美)