在宅ワークとメンタル疾患
コロナ禍をきっかけに職種によっては在宅ワークを導入した企業は多くあります。新型コロナ感染症が5類に移行した後も在宅ワークを全面的に、もしくは部分的に継続している会社が多いのが現状です。在宅ワークには通勤時間がなくなる分、時間の有効活用が期待できるといった利点がある一方、在宅ワークが一因でメンタル不調に陥る方も多くなっています。
その理由の一つとして自宅で仕事をすることが多くなるため仕事の時間とプライベートの時間の区別ができなくなるといったことがあります。特に業務内容、時間が固定化されていない、管理職やSE職など自分の裁量権が大きい一方で責任が大きい職種でメンタル不調者生じやすいです。SE職やIT技術職の方は業務内容に専門性が高く、個別性も高いためプロジェクトが始まってしまうと途中で”誰にも任せられない自分で完結しないと”とさらに自分を追い込み、無理をしがちです。
またネット環境が整った現代ではいつでもメールやラインを通して仕事を行うことが可能になっています。便利であるといった利点の一方、定時の勤務時間以外にも何かしら仕事に関わることが増えるといったデメリットもあります。
たいてい仕事中は基本的に交感神経が優位で、自宅などで休息するなどリラックスしている時は副交感神経が優位となり双方の神経がバランスをとっています。在宅ワークでは仕事の時間と休息の時間の区別がつきにくいため交感神経と副交感神経のバランスが崩れがちです。長時間交感神経が優位になるといわゆるonの状態が長くなり心身ともに疲弊してしまうのです。
交感神経が優位となって高ストレスとなると下記の変化が生じます
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- 焦り、不安、不眠といった症状が現れてきます。 そのような状態が長期化するとうつ病を発症することもあります。
- 身体には心拍数の増加、血圧の上昇といった反応が現れます
- 交感神経優位が続くと耐糖尿異常が生じ、糖尿病のリスクが上がることも知られています
ではオンとオフのバランスをうまくとるためにどうしたらよいでしょうか。仕事をする時用に生活をする部屋とは別の部屋を準備するといった方法もあります。ところが都市部、特に首都圏をはじめとした3大都市圏ではそう簡単には複数の部屋がとれないのが現状です。ではどうすればオンとオフの区別ができやすくなるでしょうか。昼の休憩時や仕事が時間が終わったらテーブルに別のクロスをかけたり植物を置いたり目に見える形で雰囲気を変える方法があります。そのほかにも散歩をしたり、お風呂で音楽を聴いたり行動で区切りを作るのも一つの方法です。何でもかまわないですので自分に合った継続しやすい切り替え方法を見つけるのも理想です。
そうは言っても切り替え方法を見つけるのが難しいと思う方も多いかもしれません。そういう方は、まずは鏡の前で仕事の始まりと終わりに自分に声をかけてもいいかもしれません。”そんなことで変化なんかあるのかな?”と思うかもしれませんが行動しているうちに自然に認知(認識)が変化し気持ちに良い変化が訪れることが期待できます。”行動は認知に変化”をもたらしうるのです。”認知が変われば行動に変化が生じます”その結果さらに好循環が生じることが期待できます。
※認知行動療法についてはこちらもご参照ください。
https://www.warabi-mental.com/cognitive-behavioral-therapy/
一流のアスリートは勝負時になにかしらの動作をして気持ちの切り替えを行っている方が多いようです。例えば力士が土俵で取り組み前に顔をたたいたり、声をあげているのも一種の切り替え法です。なんだか特殊で真似をすることが難しいことのように思われる方が多いかもしれませんが、動作などの形から入るのは認知(考え方)を先に変えるよりは容易でないでしょうか。
また何よりも自宅などで一人で仕事をしていると気軽に上司や同僚、部下に相談しにくくなり、業務に行き詰まった際にさらに悪循環になりがちです。在宅ワークが多い職種こそ時にはみんなで集まって意見交流するのもメンタル疾患の予防になるのではないでしょうか。
※ストレスが引き起こす病気
https://www.warabi-mental.com/stress/
※テレワークにおけるメンタルヘルス対策の手引き(厚生労働省 HPより)
https://www.mhlw.go.jp/content/000917259.pdf