解離性障害とは
人の心は、記憶、意識、知覚、自己同一性(アイデンティティー)などが本来一つにまとって一個の人格を形成しています。強いストレスなどで、一時的にこのまとまりがほぐれてバラバラになってしまうことが原因となっておこる疾患が解離性障害です。幼児などでは、たとえば空想上の友だちなどのようにこの解離が自分を守る反応として機能することもありますが、その状態が続いたり、成人になっておこったりすると、日常生活に不都合がおこってきますので、適切な治療が必要です。
解離性障害の症状や種類
解離性障害には、以下のように5つの大きな分類があり、それぞれによって、症状や治療法が異なっています。
解離性健忘
犯罪被害などで、強い衝撃やストレスを受けて、自身におこったことについての記憶を失ってしまうのが解離性健忘です。記憶は数日で戻ることも長期にわたって戻らないこともあります。
解離性とん走
解離状態で、突然、職場や家庭など、今いる場所から逃げ出してしまうことがあります。数日で同一性を取り戻し、元いた場所に戻ってくるのですが、時には遠く離れた場所で違う人間として暮らしていることあります。元に戻ったときにとん走中の記憶は失われています。
解離性同一性障害
自分の中に複数の人格が存在し、通常は本来の自分として暮らしていますが、何らかのきっかけで別の人格が出現し本来の人格は他の人格に支配されてしまいます。人格は主と副1つずつの時もあれば、多数存在することもあります。かつては多重人格と呼ばれていました。
離人症性障害
意識や感覚が解離してしまい、たとえば自分が話していることが、まるで他人が話しているように聞こえる、またはもう一人の自分が話しているのを見ているように感じます。
解離性昏迷
突然自らの意思で動くことや話すことができなくなってしまいます。一般的にはごく短時間のうちに元に戻りますが、その間、患者様はまったく自己同一性が保たれておらず、昏迷、混乱の極みにあります。
解離性障害の原因
発症のメカニズムについては、今のところよくわかっていません。ただし、様々なできごとによる心的外傷や強いストレスが関係していると考えられていまいす。また、幼少期のつらい体験が元になっているケースも多くみられます。その他には体質的なものもあると考えられています。
解離性障害の治療
解離性障害のあらわれ方は患者様によって大きく異なります、そのため主に解離がどのようなストレスで何故おこっているかを対話的アプローチで探っていき、その原因と症状にあわせて心理療法として、認知行動療法などを行っていきます。心理療法には即効性はありませんので、徐々に解離の症状を低減していくようにじっくりと取り組みます。その上で、つらい精神的な症状に対して、抗うつ薬などによる薬物療法を対症的におこなっていくことが有効です。
身体表現性障害と解離性障害の関係
頭痛、吐き気、下痢、便秘、疲労感といった様々な身体的症状が続いていて、検査をしても消化器や甲状腺、副腎などに原因となるような異常が見られない場合、精神的なストレスや外傷などをきっかけとして、脳の中で、感情をつかさどる神経が異常なネットワークを構成しまう状態が原因となっていることがわかってきました。それによって、冒頭の消化器症状などに加えて、執拗な痛みにとらわれる、動悸、発汗、ふるえ、息切れ、息が詰まりそうなど様々な身体的症状があらわれるのが身体表現性障害です。これと同様に身体的な症状をあらわしながら器質的疾患のないことが特徴の解離性障害があり、この2つを機能性神経症状として分類しています。
身体表現性障害の治療法
比較的新しい概念の障害で、今のところ確立した治療法はありません。まずは、内臓などに器質的な疾患がなく、脳や神経の機能の異常による体調不良であることを理解してもらうことが大切です。その上で心理療法と薬物治療を柱に治療を行っていきます。その際、家庭環境や職場環境などの調整も必要になりますので、患者様とよく話合って、必要であれば職場の担当者や家族を交えた面談などの形も模索していきます。薬物治療に関しては、対症的に抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などを使用していきます。