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HSP

 

HSPとは

HSPとは、とても感受性が強く、敏感で繊細といった気質を生まれつきもった人のことで、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が1990年代に提唱した、新しい「気質」で、英語のHighly Sensitive Personの頭文字をとったものです。アーロン博士の調査によれば、およそ5人に1人はこうしたHSPに該当する人がいます。
HSPは病気ではなく、その人のもっている心理的傾向ですが、感受性がするどく芸術的な分野などで力を発揮する一方で、繊細で刺激に敏感であるため、社会生活において生きづらい思いをするという一面ももっています。こうした側面に対してただ我慢するということではなく、それぞれの対応法をみつけることで生きづらさを緩和することができます。

HSPとうつ病

うつ病とHSPは似た部分もありますが大きな違いは何でしょうか。
簡単に言えば、うつ病はストレスなどと脳内の神経伝達物質などがかかわる後天的な疾患で、HSPはその人のもつ生まれつきの気質という違いです。気質とは感情的な傾向に基づく個人の性質のことです。
ただし、HSPの人は社会的局面で、繊細な感受性をもちながら、他者と同調し共感することに敏感になり、自己肯定感をなかなかもてなくなることで生きづらさがさらに助長され、そのストレスからうつ病を発症してしまうこともあります。
こうした傾向のある方は、仕事に在宅ワークができるものを選ぶなど、少し距離をおいた社会との付き合い方を試してみることも有効もしれません。

うつ病


 

HSPの特徴

HSPという気質には次のような特徴があります。

深く情報を処理する

塲の雰囲気や人の空気をうまく読み取る能力があります。しかしその反面情報を多く採り入れすぎるため疲れてしまいます。

過剰な刺激を受けやすい

光や音、食べ物の味やにおい、気候の変化、人の発している目に見えないエネルギーといった五感から得る感覚などの外部からの刺激に鋭敏です。一方でそうした刺激に必要以上に敏感に反応し過ぎて、過剰に反応してしまう傾向があります。

共感しやすい

親や目上の人、友だちなどの感情を読み取って共感し、自分を合わせようとすることが多く、小説、コミック、アニメ、ドラマなどの作品や登場人物に強く感情を移入してしまいます。

心の境界線が薄い・もろい

これ以上他人は立ち入らせないという心の境界線が人よりもろいため、非常に人の影響をうけやすくなります。相手に共感しやすいという特徴もあり、過剰に同調することや、引きずられてしまうことも多く、自己を見失いがちです。

疲れやすい

人に対して敏感すぎるため、楽しいことも嫌なこともつらいことも、人より激しくうけとめてしまい、疲れやすくなっています。これは何かしら行動しているときに限らず、常に無意識のうちにセンサーを張り巡らせて、まわりからの刺激を収集していることで様々な情報に翻弄され疲れてしまいます。

自己否定が強い

繊細な感覚をもっているため、対人関係においても人を責めることをせず、自分の責任、自分が悪いと思いがちです。そのため、常に自己肯定感を持てず、自信をもった行動をしにくい面があります。そのために落ち込んでしまうこともありまた、人との関わりを避けてしまうこともあります。


 

HSPへの向き合い方

HSPはその人のもって生まれた気質です。感受性が極端に鋭く鋭敏であるため、優れた面もたくさんありますが、つらい思いをする部分も多くあります。常にまわりにあわせて生きることで自己肯定感を持てなくなってしまいます。また、人より情報と深くかかわってしまうため、仕事の進みが遅く、怠けているという意識にさいなまれることもあります。しかしそれらはすべて自分が持って生まれた気質であると理解し、受け入れることでHSPである自分を楽に生きていけるようになります。自分を受け入れるためのポイントは以下のようなことです。

自分を客観的に見る

自身がどのような場面でつらく感じるのか、逆にどのような場面ではリラックスできるのかを知っておくことは大切です。そのために、客観的な記録として、どのような場面で「つらい」「疲れる」などと感じるかをノートやスマートフォンなどに記録していくことを試してみてはいかがでしょうか? もちろん、リラックスできた、楽しかったなどという局面も同時に記録していきましょう。HSPの人はなかなか自分を客観的にみることができません。そのためこうした客観的な記録をとることは大切です。

外の環境からの刺激を上手に和らげる

HSPの人は、外からの刺激に非常に敏感で、過剰に受けとめてしまうところがあります。外からの刺激がつらい場合には、たとえば音に対しては耳栓や、ノイズキャンセリング式のイヤフォンをつける、好みの音楽を聴くなど、光に対してはサングラスやアイマスクで対応するなど、既存の物も精一杯活用しながらうまくバリアを張っていくことで、問題点を少しずつ低減していくことができます。

緊張しにくい環境に身をおく

HSPという気質では、強い感受性によって緊張しやすく、対人関係を気にするあまり、いつも自分がどう周りに思われているかを気にかけたり、失敗を恐れたりする傾向があります。たとえば、仕事は個人でできるものを選んだり、在宅ワークでできるものを選んだりして、自分が安心してリラックスできる環境に身を置くことで少しでもこうした緊張感を緩めることができます。


 

HSPセルフチェック

HSPはセルフチェックで、自分がその傾向にあるかどうかをある程度、確認することができます。以下の質問に少しでも当てはまる場合はチェックを入れてください。

  • 他人の気分につられてしまうことが多い
  • 自分がいる環境が微妙に変化したことにすぐ気がつく
  • 痛みには敏感で弱い
  • 仕事などで忙しさが続くと、プライバシーが守られ刺激の少ない場所に隠れたくなる
  • カフェインがすこしでも入っていると敏感に気がつく
  • 強い光、臭い、大きな音、肌触りのザラザラした生地などがつらい
  • 空想にふけるくせがある、想像力が豊かだ
  • 騒音がうるさく落ち着くことができない
  • 芸術に感動する性質である
  • ちょっとしたことでびっくりする
  • 自分は良心的すぎるかもしれない
  • 同時に多数のことを進行しようとすると、混乱の極みになる
  • 人が不快感を覚えているポイントにすぐ気づき問題点を解決できる
  • 一度に多くのことを依頼されるのは嫌いだ
  • 失敗や忘れ物などが無いよう、いつも心を配っている
  • 暴力的な場面が嫌いで、そのようなドラマや映画はなるべく観ない
  • 周囲で複数のできごとが重なってしまうと気分が悪くなる、神経が高ぶってしまう
  • 空腹に弱く、集中できない、機嫌が悪くなる、気分が悪くなる
  • 香りや味などデリケートな変化もすぐ気づく
  • デリケートな音や音楽が好きだ
  • なにかいつもの生活に変化がおきると混乱してしまう
  • 普段の生活を乱すような状況を避けるためにいつも心を配っている
  • だれかと競争するような場面や、観察されるような場面が苦手で緊張してしまう。そのためにいつもの力が発揮できない
  • 子どものころから、周りの大人に、あの子は繊細だ、内気だと思われていた

以上の質問のうち、12個以上にチェックがついた場合はHSPの気質だと考えてよいでしょう。チェックの数は多ければ多いほど、HSPの度合いが高いと考えられます。
一方で、チェックが1つか2つであっても、当てはまりの度合いが非常に高い場合、HSPと判断されることもあります。


 

HSPのよくある質問

HSPを治すことは可能ですか?

A.HSPは持って生まれた性格であり、気質です。そのため根本的な治療方法というのはありません。しかし、生きづらさの度合いが強くてお悩みの場合は、精神科や心療内科に相談してみると、カウンセリングなどによって、考え方の変化のきっかけを掴めることがあるかもしれません。

HSPに対する薬物療法はありませんか?

A.HSPは性格であり気質ですので、薬をつかっても治すことはできません。しかし、HSPからうつ病を発症したような場合には、抗うつ薬などで対応することはできます。ただしHSPの性格までは薬では治りません。