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非定型うつ病・新型うつ病

 

非定型うつ病(新型うつ病)とは?
従来のうつ病(定型うつ病)とどう違う?

近年、「非定型うつ病」という新しい病気の分類がマスコミなどでも取り沙汰されています。これは普段はうつ状態になっていることが多いものの、そのあらわれ方が従来のうつ病とまったくことなることが特徴で、「新型うつ病」「現代型うつ病」などとも呼ばれています。発症は20~30歳代のとくに女性に多くみられます。
症状は、従来のうつ病(定型うつ病)が、気分がずっと落ち込んだままで、不眠系の睡眠障害が強く、好きだったことやものに対しても興味や楽しさを感じられなくなり、好きな食べ物なども食べられなくなるのに対し、非定型うつ病の場合は、興味があること、好きなことには没頭でき、むしろ1日10時間以上眠ってしまうことが多いなど過眠傾向があり、食欲が亢進するというよりは、食べることで気を紛らわせるようなところがあるのが特徴です。
これらのことから、境界性人格障害など、他の心の病気と間違われてしまうことも多いため、注意が必要です。

うつ病


 

非定型うつ病(新型うつ病)の症状

非定型うつ病は、従来のうつ病とまったく異なる症状のあらわれ方をします。その上、時にあまり症状が目立たないこともあり、怠けや甘えなどと誤解されるケースも多くなっていることから、発見が遅れたり、適切な手当を受けられなかったりします。

気分に浮き沈みがある

定型うつ病の場合、ずっと気分が落ち込んでいる傾向があります。ところが非定型うつ病の場合は、気分が落ち込むときと落ち込んでいない時の波があります。落ち込んでいないときは、まるでうつではないかのように普通にしているなどが特徴的です。
この気分の波の激しさと、気分が上がっているときは病気ではないかのように見えることが、怠けている、甘えているという誤解を生みます。

自身ではなく他者にいらだつ

定型うつ病の場合、何かがうまくいかない、できないといった時には、自分自身にいらだちの矛先が向かいます。それに対し、非定型うつ病では、うまくいかなかったときは自分以外の親、友人、同僚、上司などにむかって苛立ちをぶつけてしまいます。そのことによって「あの人はわがまま」などと思われがちになります。

夕方に落ち込みやすい

定型うつ病の場合、朝起きた時から、午前中にかけてうつ症状のピークとなります。これに対して、非定型うつ病の場合、抑うつや落ち込みなどのピークは夕方やってくる傾向があります。そのため、「あの人はサボりたいだけ、早く帰りたいだけ」などと思われがちです。

過食に走り太りやすい

定型うつ病の場合、一般的に、食欲は落ち込み、体重減少などがみられることが多いのですが、非定型うつ病の場合は、逆に食欲が亢進したり、食べることで気を紛らせたりすることが多くなります。それによって体重はむしろ増加気味となり、元気そうじゃないと思われることが増えてしまいます。

過眠になりやすい

定型うつ病の場合、不安やいらだちなどによって神経は興奮気味となり、不眠系の睡眠障害がでます。これに対し、非定型うつ病では、いつも眠く、10時間以上寝てしまうことが週に何日もあります。つまり過眠系の睡眠障害となります。そのためよく寝ているから健康と思われがちになってしまいます。

好きなこと、楽しいことには集中できる

定型うつ病では、ずっと落ち込んで、かつて好きだった音楽やドラマ、打ち込んでいた仕事や学業などに打ち込むことができません。何をしても楽しめない状態になるのです。
しかし非定型うつ病では、好きな音楽やドラマ、打ち込んでいる仕事などにはしっかりと集中できます。これも怠けている、甘えていると勘違いされる原因となります。


 

非定型うつ病(新型うつ病)になりやすい人

非定型うつ病は、適切な治療とケアを行うことで、かならず回復する疾患です。しかし、症状のところで例示したように、どこか甘えや怠けと似ているところがあり、他者からの誤解だけではなく、自分でも医者に相談することをためらってしまいがちです。
非定型うつ病を発症しやすいタイプの方がある程度わかっていますので、ここでは代表的ななりやすい人のタイプを挙げておきます。もし症状と、タイプ、両方が当てはまるようであれば、お早めにご相談ください。治療開始は早ければ早いほど、回復も早くなります。

良い子だった

子どもの頃、手のかからない良い子であった方は、非定型うつ病にかかりやすいと言われています。子どものころから、良い子であろうとして自分を律していたがために、他人の評価が気になったり、承認欲求が強かったりします。

責任感が強い

社会生活を送るうえで責任感は大切です。しかし責任感が強すぎると、物事を柔軟にみることができず、一本道になりがち、適当なところでやめるということができないなどのデメリットもあります。そうしたことから非定型うつ病になりやすいと考えられます。

自己主張が不得意

自分の意見をしっかりと言うことができないなど、自己主張が苦手な人は、結局なんでも自身で抱え込んでしまいます。
そのため、非定型うつ病にかかりやすいタイプと言えます。

甘えるのが苦手

自身が困っているとき、助けが欲しい時など、人に甘えることも時には大切です。人に甘えることができないタイプの人は、何か問題がおこった時に、やはり自分で抱え込んでしまい、隘路に陥りやすくなります。そのため、非定型うつ病にかかりやすいと言えます。

プライドが高い

人はプライドをもつことも大切です。しかしプライドが高すぎれば、すべてにおいて自己完結になってしまい、人に頼ったり甘えたりすることもできません。そうした方は非定型うつ病になりやすいと言えます。

優しい

優しさも人が生きていく上で不可欠です。しかし優しさも度が過ぎてしまえば、人の気持ちに入り込みすぎることや、自分のことがなおざりになってしまうことなどがあり、そのことで非定型うつ病をおこしやすいと言えます。


 

非定型うつ病(新型うつ病)の人の受診について

こころの症状が出たとき、病院にかかることをためらう人はかなり多くいます。とくに非定型うつ病では、受診をためらってしまう人が多いといわれています。
それは、症状が定型うつ病のようにはっきりと固定していないこと、他の病気や、普通の心の動きと区別がつきにくいことなどから、もしかして新型のうつ病かもしれないと思いながらもついつい受診をためらってしまうことになります。さらに、他者には甘えや怠けなどと誤解されやすい症状であるということもそこに拍車をかけることになりやすいと言えます。
しかし、非定型うつ病はできるだけ早く治療を開始することで、すばやい回復が望まれる疾患です。人から甘えや怠けとみられるからといって、我慢する必要などありません。少しでも心の不調があれば、周りの目など気にすることなく、その道のプロフェッショナルである医師に相談し、一刻も早くつらい症状から解放されることで、様々な悩みは解決していきます。


 

非定型うつ病(新型うつ病)の治療

非定型うつ病は、適切な治療によってつらい症状を改善できる疾患です。治療は認知行動療法や、薬物療法を中心に行います。
治療開始は早ければ早いほど症状が早く改善することが見込まれます。放置すれば、慢性化して治療も長期化する可能性が高くなりますので、お早めにご相談ください。

認知行動療法

マイナス思考になりがちな自動思考(認知)について、実際はもっと幅広い考え方があるといった気づきを喚起し、そこからアウトプットされる行動の偏りを修整し、社会的に適合えできるように、患者様と共に進んでいくのが認知行動療法です。
認知行動療法は、薬物に頼らず面談や会話を中心に、極端に偏った認知と、そこからアウトプットされる偏った行動について気づき、考えの幅を拡げて、出口をみつけていく訓練をします。

認知行動療法

薬物療法

非定型うつ病でも、脳内の神経伝達物質がかかわっていることはわかっています。そのため、抗うつ薬や抗不安薬などを処方することが多いのですが、定型うつ病と異なり、セロトニンの低下はあまりみられません。そのため患者様の症状のタイプにあわせて、適切な薬を選んで投与しています。ただし、非定型うつ病では、抗うつ薬の効果はそれほど高くはなく、カウンセリングなどの心理療法を併行して行うことが多くなっています。

生活習慣の改善

一般的なうつ病と同様、非定型うつ病でも日常生活の改善からのアプローチは大切です。ついマイナス思考をしてしまうといった方は以下のような方法を試してみましょう。

日常生活をいつも通りに

日常生活を規則正しく送ることは、乱れた心身のリズムをとりもどすために効果的です。仕事をもっている方は、できるだけいつも通りに仕事にとりくんでください。在宅のお仕事でも家事でも毎日時間を決めて規則正しく取り組むことが効果的です。

間食を控えて規則正しい食事を

食事は、心身の元気をつけるとともに、生活にメリハリをつけるという意味もあります。1日3食、できるだけ規則正しく食べることによって、良いリズムで脳にエネルギーが送られるようになります。

太陽の光を浴びる

人間の体内時計は25時間と言われます。天体運行による1日は24時間、1時間のずれを調整するのが、太陽の光を浴びることです。また日光は神経伝達に大切なビタミンDをつくる大切な働きもします。毎日日の光を浴びておくことで気分も爽快になります。

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