パニック障害・広場恐怖症とは
パニック障害では、突然パニック発作にみまわれ、激しいめまい、動悸、手足の震え、発汗、吐き気などがあらわれるか、または特定の環境や状態にあるかどうかに関わらず、不安などの精神的な症状や、動悸などの身体的症状が繰り返しあらわれるといった状態が少なくとも1か月以上続きます。発作が激しい場合は、その塲で倒れてしまい、救急搬送になることもありますが、検査を受けても身体的な疾患はみつかりません。そのために、またパニック発作などがおこるのではないかという不安にとらわれて、社会生活に大きな不都合がおき、仕事などを続けることができなくなることもあります。
一方広場恐怖症は、逃げられない、逃げ場がないと感じる場所において、不安や恐怖を強く感じる疾患です。パニック障害と異なり、地下鉄、エレベーターなど特定の環境や状態と不安が関連することが特徴で、不安は少なくとも6か月以上続くことで診断されます。
いずれの場合も、不安障害の一種で専門の医師による適切な治療で症状は軽減されますので、お悩みの方は当院までご相談ください。
パニック障害と広場恐怖症の症状
パニック障害の症状
突然激しい不安や恐怖にかられて以下のような症状があらわれ、その症状が数分でピークに達し、最低でも数分以上継続します。
- 動悸(強い拍動、頻脈)
- 発汗
- 手足のふるえ
- 口渇
- 呼吸が困難になり窒息するような感覚
- 吐き気や胸をかきむしるような感覚
- めまいやふらつき、気が遠くなるい感覚
- 現実感のない自分が自分から離れてしまっているような感覚(離人症)
- 死んでしまうかもしれないという恐怖
など
広場恐怖症の症状
パニック発作や似たような症状をおこしたときに、逃げることができないという特別の環境や状況に恐怖を感じ、似たような場所、状況を避けるようになるのが広場恐怖症の症状の特徴です。1度でもパニック発作を起こすことによって、またパニック発作に近いような、トイレにいきたくて失敗してしまいそうな感覚などがおこっても、同様にその場所・状況を避けるようになり、だんだんその範囲が拡がり、やがては外出ができなくなってしまうこともあります。
パニック障害と広場恐怖症の原因
パニック障害の原因は今のところはっきりとは分かっていません。しかし、近年の研究から、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが大きく発症に関係していることがわかってきました。とくにセロトニンとノルアドレナリンが大きく関係していると考えられています。
一方、広場恐怖症は、過去の恐怖やいやな想い出などから、精神的に強いストレスをうけて、自律神経が乱れることで発症すると考えられています。いずれの場合も、遺伝する疾患ではありません。
予期不安
パニック発作は、患者様が生命の危険を感じるほど恐ろしいものです。そのため、また発作がおこるのではないか、起きたらどうしようといった恐怖心、不安が心に刻まれてしまいます。こうした状態になることを予期不安といいます。パニック発作を繰り返さなくても、この予期不安が1か月以上続くとパニック障害と診断される可能性があります。一方広場恐怖症ではむしろ予期不安がきっかけとなってその後、人の大勢いる場所などを避けるようになることが主症状です。
このように予期不安は、心の弱さのあらわれではなく、心のメカニズムからおこる障害の一つですので、我慢せずに適切な治療を受けることが大切です。
広場恐怖
予期不安が亢進すると、自身が発作を起こした環境や状況そのものに恐怖心を抱いてしまうことがあります。パニック障害では予期不安が避けて通れませんので、そこから発展して広場恐怖症を合併してしまい、避けて通る場所や状況がすこしずつ増えていくと、ついには外出できない引きこもりの状況になってしまうこともあります。そうならないうちに、少しでも早くご相談ください。
パニック障害と広場恐怖症の治療
パニック障害の治療は、基本的に薬物治療と認知行動療法などとの組み合わせになります。薬物療法では、抗不安薬と抗うつ薬の選択的セロトニン再取り込み阻害薬の併用で、パニック発作や強い不安の改善を目指していきます。また認知行動療法では、カウンセラーが患者様の発作につながる不安をやわらげる方向で取り組んでいきます。
広場恐怖症の治療も基本的にはパニック障害と同様です。
パニック障害と広場恐怖症のセルフチェック
パニック発作の症状
突然おこる以下の症状が特徴です。
- 激しい動悸
- 手足や身体がふるえる
- 暑くもないのに多量に発汗する
- 息切れがする
- 息が苦しい、窒息感がある
- 胸痛や胸の違和感がある
- 吐き気、お腹の不快感がある
- めまい、ふらつきなどがある
- 気が遠くなるような感じがある
- 自分が自分でないような、今おこっていることが夢のような感じがする
- 発作によって気が狂ってしまいそうな感じがする
- 発作のときはそのまま死んでしまうような感じがする
- 身体の一部にしびれるような感じがある
こうした発作の症状に加えて、広場恐怖症では、以前に発作をおこした環境や状況に遭遇したくなく、だんだん行動範囲が狭くなっていきます。