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統合失調症

統合失調症とは

統合失調症は、認知や感覚といった脳の働きをうまくまとめられなくなる(統合できなくなる)ってしまい、意欲低下、感情の平板化、幻覚・妄想など様々な症状がおこる疾患です。思春期頃~40歳頃にかけて発症することが多いのですが、稀には中年期以降にも発症することもあります。統計ではおよそ100人に1人程度の有病率があり、どちらかと言えば身近な精神疾患の一つです。急激な症状のあらわれから、回復期へとゆっくりと病状は変化しやがて落ちつきますが、非常に再発しやすい傾向がありますので、病状を安定させ、再発を防止する治療を丁寧に続けていくことが大切です。

治療抵抗性統合失調症について

何種類かの抗精神病薬を適切な期間、適切な量を投与したにもかかわらず症状が改善しないケースや、副作用のために統合失調症で有効とされる薬剤による薬物療法を続けることができないようなケースを治療抵抗性統合失調症といいます。
この治療抵抗性統合失調症に唯一適用可能なクロザピン(商品名クロザリル)という非定型抗精神病薬があります。ただし、本剤を開始するためには原則18週の入院治療が必要とされています。クロザピンは副反応のリスクも高く全身の管理が可能な高度医療施設での治療となります。


統合失調症の症状

統合失調症の症状は「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つに分けて考えます。

陽性症状

幻覚、妄想、思考障害を中心とする以下のような症状があらわれます

  • 一貫性のない会話
  • 他人の目には見えない何かが見える
  • テレビ、ネットなどや超能力的なもので自分の悪口を言っている
  • ずっと誰かに監視されている
  • 誰かにだまされているという思い込み
  • 会話の途中で突然言葉がでなくなり会話が中断する
  • 相手もいないのに挨拶やおじぎなどの身振りを繰り返す
  • 興奮し、大声をだす
  • 意味のない身体の動きをくりかえす

など

陰性症状

感情が平板化し、思考は貧困になります。意欲が低下し、自閉などもあらわれます。

  • 感情が平板になるにつれ、表情が乏しくなる
  • 仕事や学業、日常生活などの意欲が低下
  • コミュニケーションをとることが難しい
  • 日がなぼーっとしていまう

など

認知機能障害

記憶力、集中力、判断力に関する障害がでます

  • 記憶力が低下する
  • 集中力が低下し、注意散漫に
  • 作業の効率的な段取りや次への準備などができない
  • ものごとを判断できなくなる・できにくくなる

など


統合失調症の原因

統合失調症の原因については、今のところはっきりとしたことはよく分かっていません。しかし、遺伝的な要因に、ストレスなどが加わって発症するのではないかと考えられています。また近年の研究では、脳の伝達系の異常も関係しているということが分かってきています。

神経伝達物質の異常

脳内では、神経細胞間の情報伝達に関わる物質が何種類もあります。その代表的な物質にドーパミンがありますが、分泌が過剰になると幻覚や妄想をひきおこすと言われています。その他にもセロトニンやGABA、グルタミン酸なども関わっていると言われています。

脳の機能障害、構造異常

統合失調症の患者様の脳をCTやMRIで確認すると、通常より前頭葉や側頭葉といった部分が小さくなっていることがあります。ただしそうした状態と統合失調症の関係に何らかの関係性を求めるだけの十分なエビデンスは今のところ得られていませんが脳の機能異常や構造以上が発症に繋がるのではないかと考えられています。


総合失調症になりやすい人の特徴

統合失調症が発症するメカニズムは少しずつ解明されてきていますが、未だはっきりとしたことはわかりません。ただし、もともと病気になりやすい遺伝的、脳の器質的・構造的問題や気質などの要因に対してストレス要因がトリガーとなり発症するのではないかと考えられています。


統合失調症の診断

統合失調症が疑われる場合、患者様ご本人だけではなくご家族などにも問診を行って、いつ頃から、どういった形で症状があらわれたのか、病状の変化、日常生活上の支障などについて詳しくお聞きします。
その後、国際的な精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)に基づいて診断をおこなっていきます。


統合失調症の分類

統合失調症は以下のような3つの型にわけて考えます。

妄想型

30歳前後の成人期に発病することが多い型で、統合失調症の3つの型のなかではとくに症状が軽く、周囲の人からは病気と認識されないようなケースもあります。主な症状としては妄想や幻覚がありますが、その他の症状はほとんどありません。

破瓜型(はか型)

破瓜型は、統合失調症の中でも罹患数の多いタイプで、解体型と呼ばれることもあります。
思春期の10代から青年期の20代という若い世代で発症することが多く、症状は慢性化しやすいと考えられています。解体型という別名の通り、感情が平板化し、支離滅裂な会話、行動など人格が解体してしまったような症状があらわれます。

緊張型

緊張型は、突然おこる運動関連の異常が特徴的なタイプで、激しい興奮状態と昏迷・昏睡といった両極端の状態を繰り返します。突然動き回り奇声を発する、じっと動かなくなるといった症状のほか、身体が緊張しすぎて、不思議な姿勢で固まってしまうようなこともあります。一定期間治療を続けることで症状は改善しやすいのですが、再発しやすくもあります。


統合失調症の治療

統合失調症は、様々な抗精神病薬などの開発によって、症状をコントロールしやすくなってきましたが、いったん症状が消えても再発しやすいという特徴があります。そのため、薬物療法を中心に強い症状を抑えながら、心理療法も組み合わせ、症状がおさまった段階でも
投薬を続けながら、精神科リハビリテーションを行って社会復帰を目指していきます。

薬物療法

統合失調症の陽性症状は、ドーパミンという脳の精神伝達物質の一種の分泌が過剰になることで引き起こされると考えられています。そのため、抗精神病薬の一種で、過剰になっているドーパミンを神経細胞側の受取口である受容体を遮断する薬を使用して陽性症状を抑えていきます。単一の薬だけでは症状をコントロールできないこともあり、状態によっては、複数のタイプの抗精神病薬をあわせて治療を行うこともあります。
抗精神病薬は症状のコントロール以外にも再発防止の効果も期待されていますので、自己判断で服用をやめてしまわず、医師の指示に従って服用を続けてください。

抗精神病薬

統合失調症では、薬物療法が中心となり、その中でも多く使用されるのが抗精神病薬ですが、それ以外にも補助的に睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、気分安定薬、抗コリン薬、パーキンソン病の薬などを状態に応じて複合的に使用することもあります。
これらの薬は、副作用が出ることもあります。お薬に関して分からないことや不安なことなどがありましたら、気軽にご相談ください。

SDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)

脳の緊張を緩和するセロトニンや脳を興奮状態にするドーパミンといった神経伝達物質の働きを、神経細胞側の取り込み口を遮断することでブロックする薬です。ドーパミンのコントロールによって陽性症状を緩和し、セロトニンのコントロールによって陰性症状を緩和します。主な薬にはリスペリドン(リスパダール)、パリペリドン(インヴェガ)、ペロスピロン塩酸塩(ルーラン)、ブロナンセリン(ロナセン)、ルラシドン(ラツーダ)などがあります(なお、丸括弧内はすべて商品名です)。

MARTA(多元受容体作用抗精神病薬)

英語のMulti-Acting Receptor-Targeted Antipsychoticsの頭文字からこの名前で呼ばれますが、セロトニンやドーパミンだけではなく、ヒスタミンやアドレナリンなど多くの神経伝達物質の受容体をブロックするタイプの薬で、陽性症状、陰性症状ともに改善が期待されています。
代表的な薬としては、ジプレキサ(オランザピン)、アセナピンマレイン酸塩(シクレスト)、クエチアピンフマル酸塩(セロクエル)などがあります。

DSS(ドーパミン部分作動薬)

過剰にドーパミンが分泌したときには、ドーパミンの受取口を遮断し、逆にドーパミンが不足した時にはドーパミンの受取口を活性化するタイプの薬で、陽性症状、陰性症状の双方に効果を発揮します。
代表的な薬としては、アリピプラゾール(エビリファイ)、ブレクスピプラゾール(レキサルティ)などがあります。

定型抗精神病薬

定型向精神薬は、ドーパミンの働きをブロックすることで、陽性症状の改善が期待できます。しかし、ドーパミンをブロックすることで陰性症状を増悪させてしまうなど、副作用が出やすい薬でもあります。代表的なものにハロペリドール(セレネース)、スルピリド(アビリット、ドグマチールなど)、クロルプロマジン塩酸塩(ウインタミン、コントミン)、レボメプロナジン(ウインタミン、コントミン)などがあります。

精神科で使用する薬

心理療法

統合失調症では、主に支持的精神療法(カウンセリング)を中心に行います。この療法はカウンセリングによって、患者様の気持ちを受けとめて、サポートしていくことと、病気の特徴や薬物治療の大切さなどを患者様に理解していただき、円滑に治療を続けていくことができるようにすることも重要な目的の一つです。
職場や学校などがストレス要因となっている場合は、一時期、休職や休学で対応できますが、家庭にも要因があるケースでは、家族間の相互理解が必要となるため、当院では家族カウンセリングなどもおこなっています。
再発の予防のため、精神科リハビリテーションをおこなっていくこともあります。


統合失調症チェックリスト

  • 自分を責め立てたり、何かを命じたりするような声が頭の中で聞こえる
  • 自分が誰かに操られているように思う
  • 知り合いもそうでない人も自分の悪口を言い立て、嫌がらせをしてくるように思う
  • 自分の考えていることが人に聞こえているように、さとられているように思う
  • 誰かに監視されている、狙われていると感じる
  • 激しい緊張と不安を感じる
  • 楽しみ、嬉しさ、心地よさといった感覚がなくなった
  • 独り言を言うことが増え,一人笑いをするようになってきた
  • 会話することが苦痛になり、人と話さなくなった
  • 頭の中がざわついて眠れない
  • 眠りすぎてしまう
  • 混乱してしまい、考えをまとめることができない
  • 直前におきたことを思い出すとことができない
  • ちょっとしたことにも過敏になり、興奮したり、興味を削がれたりする
  • 自室に引きこもって、一日中なにもせずぼんやりしていることが多い
  • 何事にも気力や意欲が出ず、行動が億劫になった
  • 即時に判断することができなくなった
  • 一つことに集中できなくなった